株を買う行為は、その企業の一部を所有する事と同じです。
つまり、誰でも上場企業のオーナーになる事ができます。
しかし、個人が株を買う目的は、あくまでも儲けることですよね?
とても優秀で価値が高い企業だとしても、1株あたりの企業価値より高い価格で株を買ってしまえば、損する可能性も高くなります。
なので、なるべく安い価格で価値の高い企業の株を買いたいものです。
それにしても、企業価値を発行株式数で割った1株当たりの企業価値よりも安い株価で買える事なんてあるんでしょうか?
それが、けっこうあるんですよ!
数年に1度~年に数回程度と、不定期ですが株のバーゲンセールが開催される事があるんですよね。
そして、1株あたりの企業価値より株価が安くなるバーゲンセールの時が、株を買うタイミングです。
株の買いのタイミングである、バーゲンセールについて解説します。
☑株のバーゲンセールってどんな時?
☑バーゲンセールの見極め方
企業価値を見積もる方法
企業価値(Enterprise Value)とは、金融的側面から見たときの企業の価値のことです。
そして、1株当たりの企業価値よりも安い価格で株を買おうと思うと、まずは企業価値を計算しなければなりません。
しかし、この「企業価値」を正確に計算する方法ってないんですよね。
「じゃあ、バーゲンかどうかわかんねーじゃん!」
と思いますよね?実はその通りです。
しかし、正確に測れないとしても概算で企業価値を見積もる方法はあります。
例え概算だとしても、企業価値をまったく見積もりしないよりは何倍もマシですよね。
例えば、企業買収(M&A)の際にも、いくらの価格で買収するのが妥当なのか、いくつかの方法で企業価値の見積りをおこないます。
企業価値を見積もる一般的な考え方として、メジャーな方法は以下の3つです。
- コストアプローチ
- インカムアプローチ
- マーケットアプローチ
それぞれの考え方を解説します。
コストアプローチ
企業の持つ資産や負債に着目して価値を見積もる方法です。
基本的には総資産から負債を引いて、残った純資産を企業価値と考えます。
しかし、棚卸在庫や固定資産などの換金性の低い資産は、価値を割引して計算します。
さらには、含み益や含み損を抱える資産もあるのでそれらも考慮し、純資産を補正します。
コストアプローチで企業価値を見積もる方法は以下の記事で詳しく解説。
インカムアプローチ
企業が今後の活動で得られるであろう将来の利益予想から、企業の価値を見積もる方法です。
直近の当期純利益でPERが10~20くらいになる時の株価を企業価値として算出すると簡易的に求められますが、前提となるPERの設定で企業価値が大きく変動します。
さらに、将来の利益を正確に予想する事は困難なので、企業価値の見積もり方法としては正確性に欠けます。
インカムアプローチによる企業価値の見積もりには、将来の利益予想を現在価値に割り引くDCF法や、期間毎に段階的に利益予想を見積もりするDDMモデルなどの細かなバリエーションがあり、それぞれ見積もった企業価値も異なる結果になります。
インカムアプローチで企業価値を見積もる方法は以下の記事で詳しく解説。
マーケットアプローチ
他社や業界平均の時価総額などを比較対象に、相対的に企業の価値を見積もる方法です。
これも相対的に見積もる方法なので、企業価値の計算根拠が弱い方法ですが、何かの価値というのは相対的に決まるものなので参考までに計算しておきましょう。
マーケットアプローチで企業価値を見積もる方法は以下の記事で詳しく解説。
結局、企業価値はどれで見積もれば良いの?
いずれも企業価値を見積もる方法として異なるアプローチで、どれも正確に計算できる方法ではありません。
しかし、大まかな企業価値を見積もる事ができるので、まったくの無意味ではありません。
個人的な考えですが、マーケットアプローチは市場の平均から相対的に導く方法なので、計算根拠に信憑性がありません。
企業の純資産から企業価値を求めるコストアプローチで得た結果と、未来の収益予想から導かれるインカムアプローチで求めた結果を足したものを、企業価値として見積もるのが妥当です。
プロの証券アナリストが発表している理論株価も、大きなバラつきがあり「必ずこれが正解!」というのはないので、個人の考えを反映させてアレンジしても良いでしょう。
株のバーゲンセールとは?
実際の株価は、しばしば企業価値を無視するかのように値決めされます。
なぜならば、株価は「買いたい投資家」と「売りたい投資家」のバランスが釣り合う価格に収束するからです。
そして、株式市場にはテクニカル分析を重視する投資家や感覚だけで投資する個人投資家など、企業価値の見積もりをしない投資家が一定数います。
すると、株価下落の不安や恐怖を感じた時に、企業価値を大幅に下回る株価になるまで売られすぎたり、逆に企業の成長期待に対するイメージや期待感だけが高まり過ぎて、企業価値以上に買われすぎたりするんですね。
なので、企業価値を大幅に下回る株価になるまで売られるか、企業価値は高まっているのに安い株価のまま放置されている時がバーゲンセールです。
そして、妥当な企業価値から離れすぎて、バーゲンセールで売り出された株価は、やがて適正な価格に回帰していきます。
バーゲンセールの見極め方
まずは、企業のIR情報から財務諸表を確認し、企業価値を見積もっておきましょう。
IR情報は各企業のホームページなどでも公開されていますが、EDINETなどで検索するのが便利です。
そして、企業価値に大きな変化がないのに、株価が大幅に安くなった時がバーゲンセールです。
日本国内の株式であれば、日経平均やTOPIXなど市場全体が20%以上暴落するような時には、ほとんど全ての株価が下落するので、こういう時にバーゲンセールが開催されます。
数年に1度~年に数回程度ですので、普段から自分なりに企業価値の変化を見積もって準備しておきましょう。
市場全体が暴落する時には怖くてなかなか買えないものですが、個別企業の事情で企業価値が下がっている訳でなければ、ほとんどの株価は適正な価格へ戻ってきます。
最近では市場全体の暴落があっても、半年以内に回復するケースがほとんどです。
なので、株価が企業価値よりも大幅に安いという事実を確認してから買えば良いわけです。
しかし、本当に企業価値が下がっている為に、株価が下がっているケースがあります。
注意点すべきポイントは個別の株価の動きだけでなく、日経平均株価やTOPIX、さらには米国株式市場などと比較して、経済全体のマクロ要因による下げなのか、個別企業毎のミクロ要因の下げなのかを見誤らないように注意しましょう。
市場全体の下げの底読みをして最安値付近を狙うには、騰落レシオに注目するのもオススメです。
騰落レシオについては以下の記事で解説しています。
まとめ
バーゲンセールで株を買う投資手法は、いわゆる「逆張り投資」や「バリュー投資」とも呼ばれる方法です。
バーゲンセール期間中に株を安く買う事で、効率よく儲けましょう。
例えば、2018年の10月~年末にかけてNYダウやS&P500などに代表される米国株式市場は20%程度下落しました。
しかし、わずか3.5ヶ月程度で最高値更新しています。
このような株価の下落は、早ければ数か月~遅くても数年も待てば回復するものです。
下落の底を読む自信が無ければ、 割安株の場合に限り、数回に分けて買っても良いかもしれません。
しかし、ナンピンになるのでリスク低減の為に、数銘柄に分散して投資することをオススメします。
コストアプローチで見積もった1株あたりの企業価値に対して、株価が大きく下回る企業を見つけて高い成果を狙いましょう。